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いかなるほしのもとに
如何なる星の下に
高見 順
「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页
そしたら但馬は、こっちへ来たら、倉橋さんに会いたいッて……」
「あ、そう」私は但馬に会ってみたかった。そこで、その話をしようとすると、美佐子はそれを避ける風に、
「熊手には入船と出船があるんですッてね」
「ふーん」
「芸者家なんかは出船、料理屋なんかは入船……」
「――なるほど」
私はくしゃみをひとつして「僕らはどっちかな」
原稿が大いに出た方がいいという意味では出船だが、金が入った方がいいという意味では入船だ。言おうとして私は、いつか誰かが雑誌社から原稿の依頼があったのを、もとより冗談の口調だが、○○社からお座敷がかかったと言ったのを聞いて、作家が芸者になぞらえられるのにいやな気がしたことのあるのを思い出した。出船を買うことはみずからを芸者と見なすことになる。そこで私は、
「――やっぱり入船だな。原稿がいくら出ても無料原稿では仕方がない。――美佐子君たちは、ところで、どっちかな」
しまった。芸人は芸人らしいプライドを持て、芸者のようなまねをするなと「惚太郎」の細君が言ったばかりではないか。そこで私は、
「そうだ。お嫁に行く娘さんなどは、特に縁遠い娘さんなどは、出船を買うといいわけだな。