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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

しかるに現実は堂々と書いているのだ。小説家がバカバカしくてそらぞらしくてあさましくて書けないようなことを平然と展開してみせる現実の図太さ、そのヌケヌケとした現実の恐ろしさに、私の脆弱な小説家的な神経はむざんに叩きのめされた。そうだ。現実の不思議さにいわば打たれつづけている私ではあったが、この不思議さは、身近というのも愚かな身近さだけに私を打ちのめす力も大きかった。――私は、おそらくは現実に打たれつづけているせいもあろうが、私の心構えとしても、現実に対しては謙虚なつもりであった。小説で現実を裁断するというような、いわば現実を怒らせるような不遜なまねは努めてしないようにしてきている。だのに現実は私に対して、なんの怨みがあってそのような手ひどい打ちすえ方をするのだろう。私の受けた痛みは、単に小柳雅子が嶺美佐子の妹だというのに対する驚きだけではなかった!

被官稲荷の前に行った時は、私たちに気づかぬサーちゃんは浅草神社の方へ急ぎ足で去っていて、私もドサ貫もあえて呼びとめようとはしなかった。社前には新門辰五郎が奉献したという、柱に新門と刻んである石の華表が立っていて、その内側に木でつくった小さな神燈がある。