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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

寒い。ほんとうはそんなに寒くなかったのかもしれないが、防寒の備えのないことが神経的に寒さを呼んだのであろう。ないものへはほしいと思う心が一層募るものである。

――私はひどく惨めな気持で坐っていた。誰に命令されてそうしているわけでもない。自分でそうしているのだ。すなわち別にそうして坐っていなくてはならないわけはないのだが、私はじッと坐っていた。そして、

「――なんで俺はこんな佗しい部屋にひとりでポツンと坐っていなくてはならないのだ」と返事のできない問いを自分に投げていた。そこは仕事部屋に借りたものだ。だから私は仕事をするために、そこに坐っている理屈である。だが、一向に仕事に手がつかず、そして、そうしてじッと坐って待っていたところで私の心が仕事へと立ち向うべく奮起する見込みはまずないと自分でも諦めていた。だったら外へ出たら、よかりそうなものだ。大体私が盛り場の近くに部屋を借りたのは、放って置くとぼやッとしている自分を、めまぐるしい雑踏のなかへ突き込み、神経に刺激を与えて仕事へと追いやろうという策略からであり、またそれがいつか習慣になっていたからである。