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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

「その但馬ですがな、――」

と言った。

「但馬がどうというわけじゃないのかもしれんですよ。というのは、インテリは但馬だけで、周囲の浅草の連中は但馬と人間がちがう。そこで、その連中は但馬に一目置いている。尊敬している。但馬の言うことに耳を傾ける。その辺のところから、但馬がどういうわけでもないのに、但馬の作用という奴が生れてくるのかもしれないんでさ。(自分に納得させるように、朝野はうなずいて)そうだ。それに違いない。――但馬はいつもこう言っているんですよ。逞しく生きよう、とね。これが奴のオハコなんですわ。ちょっと気障な科白だが。逞しく生きよう。そう言う自分が、からきし逞しくなんかないんだから、こいつは全く喜劇だが、――(と、どす黒い唇を毒々しく歪め)まあ、お題目みたようなもんですな。このお題目を、但馬の周囲の連中は、なんかというと但馬から聞かされて、頭に滲みこませている。だから但馬の顔を見ると、すぐそいつが頭に浮ぶといった工合に違いない――例の小悪党なんかも、そうなんだな、きっと。但馬の顔を見たら、逞しく生きよう。これがピンと来た。それで但馬に会っただけで、但馬がなんにも言わなくても、やッたれと気持がきまった。