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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

またぞろ浅草へ行きたくなった。それは初めは、なんとなく浅草へ行きたいなアといった漠然とした想いだったが、それがやがて、浅草へ行ってああもしたい、こうもしたいといった具体的な欲望へと進んで行った。それは異郷に身を置いた人が、たとえば、――パリパリと音のする快い歯応えの沢庵でお茶漬をひとつさらさらッと食いたいなといった欲望のうちに、ノスタルジアの具体的なものを感ずるのに似ていたが、しかし私にとって浅草は逆に外国なわけであるから、ヘンな工合である。すなわち郷愁というよりやはり憧憬というべきであるかもしれぬ。けれど気持としては、憧憬というより郷愁というのにずっと似たものなのであった。

――私は、たとえば、浅草の安食堂の、メシを山のようにこんもりと盛りあげたあの丼がむやみと恋しくなった。自分の家の、小綺麗なこぢんまりした茶碗で、「ごはん」を頂いているうちに、私は不潔で逞しい「メシ」が食いたくなった。一種の道楽心と言われるかもしれないが。そうだ、私の友人で、アパートにひとりで住んでいて、三度(あるいは一日二度)の食事を外の簡易食堂でしているのが、ある時、

「僕は坐って、ごはんが食べたい」