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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

。が、それは朝野のいわゆる鯛に食いあきて鰯を食いたいとする、そんな類いではない。家での食事は決して「鯛」ではなく、そしてまた「鯛」的な外の食事をしたいという気持はない。すると丼メシが恋しいのはどういうのだろう。落魄的気分を愛するおかしな趣味だろうか。そうだ。趣味なんだろうか。それとも……。

*

珍しくそう寒くないある日の午後であった。私は二階の障子を開き、その外のガラス戸もあけ、そっちに向けた机で原稿を書いていた。頭がもろもろのことに散って原稿がはかどらない。私が坐っている眼の前に、道を隔てて二階家があり、その家の窓に、窓はしめてあったが、ぼんやりと眼をやっている時間の方が多かった。こんなことではいけないと気分を一転させるために、私は便所に立った。そう短くない時間を便所で費して、二階の机の前に戻ると、――前の家の窓がいつかあけてあって、その家の十四五ぐらいの娘さんが窓にもたれている。何か物想いに沈んでいるような暗鬱な眼を外に向けている。

視線が合った。両方とも同時に眼をそらせた。私は机に顔を向けていたが、やがてそッとうかがってみた。――向うからもこっちからも相互に丸見えであって、丸見えのところに私が頑張っているので、娘さんはきっと、あら、いやだわと窓から離れたろう、そう思ったが、娘さんは、――娘