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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页
たんば老人はつつしみぶかく、感心したともしないともつかない、あいまいな、しかし決して笑いたいような顔はみせずに、ゆっくりと幾たびも頷いた。
三十日経ち、五十日経った。新妻を迎えてからおよそ七十余日経ったころ、徳さんは別個の問題について、たんば老人の意見をききに来た。
「その、あれなんだがよ、ちょっと云いにくいことなんだがよ」彼はしきりにうしろ頸を掻いたり撫でたりした、「こいつはたんばさんだから云えるんだが、くに子のやつはまあ箱入り女房さね、世間ずれのしていねえ、うぶなこたあ、これまでなんども話したとおりなんだが、それにしてもげせねえことがあるんだ」
老人は黙って、膝の前にある詰め将棋の盤を見まもりながら、徳さんのあとの言葉を待った。
「それってえのがおめえ、なんだあ、つまりあのときのことよ」と徳さんは口ごもりながら云った、「あのときってえばわかるだろうが、あっしがよ、その、なんだあ、つまり汗だくんなってつとめてるさいちゅうによ――くに子のやつはいきなりへんなことを云いだすんだ、ねえあんた、秋になると木の葉はどうして枝から落ちるんでしょうって、――あっしゃあびっくりしちゃったよ、ほんとにさ、おめえそんなことを考えてたのかってきくと、いま急に気になりだしたんだって、こんなときにまたどうして気になりだしたんだって