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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页
きいたら、どうしてだかは知らないがとにかく気になってしょうがないって、――よせやい、いまそれどころじゃねえじゃねえかって云って、あっしゃあまた馬力をかけたが、いけねえんだたんばさん、秋になると枝から木の葉が落ちらあな、なるほど、どうして秋になると落ちるのかって、こっちも気になりだしちまったら、馬力がまるっきり抜けちまったってわけよ」
「その次にはおめえ歯だ」と徳さんは続けた、「あっしが汗だくんなってるさいちゅうによ、ねえあんた、人間の歯はなんで出来てるんだろうねときた、歯はおめえ歯じゃあねえかと云ったら、だってさ、骨でもなし肉でもないんだから、なにかほかの物で出来てるに違いないじゃないのときた、――よせやい、いまそれどころじゃねえじゃねえかって云って、あっしはまた馬力をだしにかかった、ところがいけねえんだたんばさん、待てよ、そう云われてみれば人間の歯は肉でも骨でもねえ、とするといってえなんで出来てるんだろうってね、そいつが気になりだしてまた途中下車だ」
その次はおさつ(紙幣)のことで、百円さつがあって千円さつがあるのに、どうして百五十円さつとか千五百円さつがないのか、ときたそうである。