轻松读懂日语经典作品
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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页
晩めしが済むと、平さんは少し食休みをしたあと、およそ十時ころまでマットレスを編む。必要があるからではなく、時間つぶしのようで、仕事はあまりはかどらない。蝋燭の火で眼が疲れ、涙が出てくるようになると、織り機を片づけて寝る。――女はあと始末をし、平さんの脇で、薄い蒲団一枚にくるまって横になる。むろん蝋燭は消してしまうから、月夜でない限り小屋の中はまっ暗になる。平さんはときどき寝返りをうつが、いびきをかくようなこともめったにない。そしてやがて、女がすすり泣きをはじめるのだ。
草原を風が吹きわたるような、ひそかな声ですすり泣き、喉になにか詰ってでもいるような、かすれた囁き声で、とぎれとぎれに話しだすのであった。
「店のほうはうまくいってます、婿がよく働いてくれますから」と或る夜は云った、「よくできた婿で、あたしにもよくしてくれます、いまでもあなたの話がでると、うちへ来てもらおうって云うんです」
「あたしどうしたらいいの」と或る夜は云った、「家付き娘に生れて、わがままいっぱいに育ったから、罪なことも罪だとは知らなかったんです、とくべつに好きだからあの人とそうなったんでもなし、生んだのがあの人の子だということも、自分ではよくわからなかったんです、――それだけは信じてもらいたいんです」