轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页

青空文庫

寒藤先生の心臓は十八歳の少年のようにふくれあがり、かつ激しく肋膜の裏を乱打した。せい子がそれを確認したことにも疑いはない、なぜかなら、彼女はその貧しい稼ぎにもかかわらず、顔におしろいを刷き、口紅を塗り、寒藤先生が来る日にはご馳走を作って、その膳の上に酒さえも出すようになった。

焼酎はおからだに毒だから、とせい子はじつのこもったことを云い、先生をながし眼にみつめた。また、酌をするときには左手で右の袂を押えるという芸のこまかいところを演じてみせ、先生がすすめれば、羞みながらも杯を受けた。

たとえ寒藤先生が朴念仁であるにせよ、こうまでされて安閑としてはいられない。先生は自分がなにか云いださなければならない立場に立ったことを悟り、まず「そんな亭主とは離婚すべきである」こと、そしてじん少年の将来のため、誰か教養のある、しっかりした人物と再婚すべきこと、などから説きはじめ、せい子がいちいち尤もであると頷き、先生に突撃路をひらいてやるためだろう、手を伸ばして先生の膝をやんわりと押えた。すると、先生の舌がまた自己主張を始めた。

大ビスマルクいわく、勝って奢らざるは将の将たる者なりと。