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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页
肌の色は黒く、髪は茶色でちぢれ、額が抜けあがっていた。としは良太郎より三つ下の三十二歳であるが、見たところは逆に四つくらいもとし上のようであった。
みさおは殆んど家にいない。食事の支度とか、子供たちの着物のつくろいなどはするが、あとは長屋のどこかで、かみさんたちとお饒舌りパーティーをしたり、つかみあいの喧嘩をしたり、その仲裁をして酒を飲んだり、そうかと思うとしばしば、半日もどこかへ消えたりしていた。
「あーあ、まったく女なんてつまらねえもんだ」彼女は一日に幾たびか、きっとこう嘆かないことはない、「――男は勝手にしたいことをして、亭主関白だなんておだをあげていられるが、女は腰の骨の折れるほどはたらいても、たのしみに芝居ひとつ見にいけやしない、考えてみるとなんのために生きているのか、つくづくわが身が哀れになっちまうよ」
良さんはやんわりと微笑しながら、せっせと、しょうばいの刷毛作りに精をだしていた。
良さんは腕のいい刷毛作りで、刷毛といってもヘアー・ブラッシなのだが、問屋でも彼の作った物は高級品として扱い、一流化粧品店とか洋品店、百貨店などへ納入していて、けれども仕事がのろく、数があがらないので、「ごうがにえる」