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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页
酒呑みに女は不用だと、自分でもいばっていたし、それを裏切るような例はなかった。かつ子は生みの親でさえ、「がんもどき」と云うくらい、きりょうも悪いし、躯つきにも娘らしさなどまったくなかった。それをどうして、京太が手を出すような気になったか、そこに少なからず疑問があった。尤もおたねにはそれは重大でもなんでもなかった。たとえ相手が京太だとしても、口惜しいとかねたましいなどという気持はおこらないのである。古風な考えかたかどうか知らないけれど、毎月の面倒が終って以来、自分はもう女ではない、ということを漠然と感じ、なまぐさいような感情からはすっかり解放されていた。ましてこんどの腫物の切除で、実際にも女であることを喪失したため、そういう問題にはいっそう淡泊になったようであった。
だがそれで済むことではなかった。かつ子の躰内では一日ごとに育っているものがある、そのまま産ませるか、それとも中絶するかきめなければならないし、いずれにせよ、費用は妹のかなえに頼む以外に手はないので、まず亭主に当ってみた。
日の昏れかかる時刻で、かつ子を酒屋へ使いにやり、二人だけになるとすぐ話しだした。