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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页
「警察ではあんたに出頭するようにって、云ってましたよ」とおたねは仕事にかかりながら云った、「病気じゃないってことは刑事さんが知ってるようです、出頭しなければなにかの罪になるんだそうですよ」
「おれが、警察へ、――だって」京太は不審そうにおたねの顔を見まもった、「なんのために」
「かつ子が話すことがあるんですって、刑事さんの前で」
「おれになんの関係がある」
「知りません」おたねは仕事の手を動かしながら云った、「十八歳未満のことになにかひっかかりがあるんでしょ、伊勢正の小僧さんが死なずに済んだとわかったら、かつ子がそれじゃあ話すことがあるから、伯父を呼んでくれって云いだしたんですって、――刑事さんはもうなにか聞いたような口ぶりでしたよ」
「でたらめだ」京太ははね起きた、「あの不良少女がなにを云ったか知らないが、そいつはみんなでたらめだ、そんな中傷を信じるばかがあるか、おれには初めからわかってた、あの恩知らずの不良娘は、いつか飼い犬が脛を噛むようなまねをするにちがいないってな」
おたねは亭主のけんまくに少し驚いたようすで、仕事の手は休めずに、ゆっくり京太のほうを見やった。