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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页

青空文庫

「こっちは本気で、なかまの一人を叩っ殺すつもりでしたよ、実際に殺せたかどうかはわかりませんがね、自分では本気にそう思いつめていたんです」と小田滝三は云った、「二番めの子が生れてまのないときだし、しょうばいに気乗りがし始め、これならどうやらやっていけるって思ってたときでしたからね、その上とくいを横取りされたうえ、ばかみたように云われたんですから、こんなその日ぐらしの者にとっては、それこそ生き死にの問題なんですからね」

「六、七年まえにそんな年寄はいなかったな」と寒藤先生は云った、「そんなような年寄がいたという記憶はないな、それははなしだな」

「私もあとでそうじゃないかと思いましたよ、どうしても死にたいとか、一時間たつと頓死する毒薬とかいうんで、つい聞きとれているうちに熱がさめちゃった」

「にえ湯がぬるま湯になったというわけだ」寒藤先生は笑って云った、「そのはなしの年寄のように、小田くんも一服盛られたということだな」

「おかげでばかなまねをしずに済みましたがね」

或るとき、曾根隆助がたんばさんをたずねて来て、自分の妻が男をつくったがどうしたらいいか、と意見を求めた。