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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页
とかみさんたちは云った、「こっちは鬼ばばあだけれど、刷毛屋の人はまだあいそがいいし、つきあいってことを知ってるもの」
このように、お琴はかみさんたちから嫌われていた。
お琴が男性に対していかに大きな関心と興味をもっていたにしても、鬼ばばあという渾名が示すような風貌と性分では、なかなか色っぽい問題はおこりにくいであろう。刷毛屋の女房がそのほうの達人であるのと正反対に、お琴はそれまで潔白であり無傷であった。五人の子供たちも正しく曾根隆助の子であるし、――それが証明できるか、などという好奇心の強い人には、いちどお琴に会ってごらんなさい、とお答えしよう、――またいま彼女は妊娠ちゅうであるが、それも隆助のたねであることを疑う者は一人もなかった。
そのようなお琴が、ついに男をつくったという。曾根隆助の話によると、相手は二階に間借りしている二十二の青年で、孝ちゃんといい、昼は運送店に勤め、夜は定時制高校にかよっている。二十二で夜間高校にかようというのはよっぽど好学精神の旺盛なたちなのだろう。温和しくて、天候の挨拶をするにも顔が赤くなる、ということであった。
「ええ本当ですとも」