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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页

青空文庫

たんば老は慎重に答えた、「どこかへ掠ってゆかれたにしても、あとのほうならまず躯に別条はないだろう、人に知れないところに匿まわれて、いかさま賽を作ればいいんだが、これがまえのほうだとすると無事では済むまいな」

博奕でいかさま賽を使えば、殺されないまでも躯のどこかをつめられる。半助は使ったのではないけれども、よほど巧妙な細工だとすれば、二度とそんな物が作れないように、やはりどこかをつめられるかもしれない。

「どっちとも云えないな」と老人は云った、「まあそのうちにはわかるだろうよ」

近所の人たちは、暫くその話で気ばらしをした。いかさま賽については、徳さんが各種の例を説明し、その中には人間わざでは作れそうもない細工があり、どこまでが本当のことか疑わしかったが、それだけになお、半助の日常のひっそりした、呼吸さえ忍ぶような生活ぶり、決して人づきあいをしない明け暮れが、これで初めてわかったと、かれらは語りあった。

半助が連れ去られてから五、六日して、ジャンパーにズボンという恰好の男が二人来て、半助の家の中を片づけて去った。まえに来た三人とはべつの男たちで、隣りの住人にもなに一つ云わず、勝手に家の中へはいり、なにかごとごとやったのち、雨戸を釘付けにし、口笛を吹きながら去っていった。