轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

さむはし

寒橋

山本 周五郎

「キング」大日本雄辯會講談社、1950(昭和25)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,416 字 · 36 页

青空文庫

その日は朝から南風が吹いて、気持の悪いほど暖かかったが、風がおちてからも気温が高く、花でも咲きそうな陽気だった。このところまた胃の調子がいけないらしく、沈んだ顔色をしていた父が、その夜は気分がいいとみえて、夕食のときには久しぶりに釣りの話などした。

「こんな晩はあなごがくうんだがな、……しかし海ばかりやって来たから、今年はひとつ鮒をやってみようかと思う、……槇町じゃあ慥かそのほうの天狗だったな」

「親父のは口ばかりですよ、釣りにゆくんじゃなくって酒を飲みにゆくんですから」

「いや釣ったものをそこで作って飲むのが釣りの本味だというくらいなんだ、私は飲めないからだめだが……」

お孝は二人の話を聞きながら、寒橋の夜の河岸を思いだしていた。

父が寝て、良人が寝てから、暫く解き物をしていたお孝は、ふいと誰かに呼ばれるような気持で、膝の物を押しやって立ち、音を忍ばせて裏口から外へぬけだした。……十一時ごろだろう、近所は戸を閉めて寝ていたが、ところどころ灯がもれ、楽しそうな話し声の聞える家もあった。まっすぐに河岸へぬけ、寒橋の、いつも父の坐る崩れた石垣のところへいって佇んだ。