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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页
なんのためにそんな事をして小さな生物を苦しめるかというような事は少しも考えてはいなかった。それでも虫の食物か何かのつもりで、むしり取った芝の葉をびんの中へ詰め込んで、それで虫は充分満足しているものと思っているらしかった。そのまま忘れて打っちゃっておいたびんの底にひっくり返って死んでいるからだを見つけた時はやはりいくらかかわいそうだとは思うらしい。それで垣根のすみや木の下へ「虫のお墓」を築いて花を供えたりして、そういう場合におとなの味わう機微な感情の胚子に類したものを味わっているらしく見える。子供が虫をつかまえたり、いじめたり殺したりするのは、やはりいわゆる種属的記憶と称するものの一つでもあろうか。このような記憶あるいは本能が人間種族からすっかり消え去らない限り、強者と弱者の関係はあらゆる学説などとは無関係に存続するだろう。
子供らはまたよくかやつり草を芝の中から捜し出した。三角な茎をさいて方形の枠形を作るというむつかしい幾何学の問題を無意識に解いて、そしてわれわれの空間の微妙な形式美を味わっている事には気がつかないでいた。相撲取草を見つけて相撲を取らせては不可解な偶然の支配に対する怪訝の種を小さな胸に植えつけていた。