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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页
このような闘争殺戮の世界が、美しい花園や庭の木立ちの間に行なわれているのである。人間が国際連盟の夢を見ている間に。
ある学者の説によると、動物界が進化の途中で二派に分かれ、一方は外皮にかたいキチン質を備えた昆虫になり、その最も進歩したものが蜂や蟻である。また他の分派は中心にかたい背骨ができて、そのいちばん発展したのが人間だという事である。私にはこの説がどれだけほんとうだかわからない。しかしいずれにしても昆虫の世界に行なわれると同じような闘争の魂があらゆる有脊椎動物を伝わって来て、最後の人間に至ってどんなぐあいに進歩して来たかをつくづく考えてみると、つまりわれわれの先祖が簔虫や蜘蛛の先祖と同じであってもいいような気がして来る。
四十九個の紡錘体の始末に困ったが、結局花畑のすみの土を深く掘ってその奥に埋めてしまった。その中の幾パーセントには、きっと蜘蛛がはいっていたに相違ない。こうして私の庭での簔虫と蜘蛛の歴史は一段落に達したわけである。
しかしこれだけではこの歴史はすみそうに思われない。私は少なからざる興味と期待をもってことしの夏を待ち受けている。