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どんぐり

寺田寅彦随筆集 第一巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页

青空文庫

請負師や大工に責めを帰していいのか、在来の建築方式そのものに欠陥があるのかどうかわからない。考えてみると請負師や大工に言ったくらいでねずみが防ぎきれるものならば大概の家にはねずみがいないはずである。しかし実際ねずみのいない家はまれであり、ねずみがいなくなると何かその家に不祥事が起こる前兆だという迷信があったりするくらいだから、少なくもわれわれ日本人は天井にねずみのいる事を容認しなければならない事になっているかもしれない。それを自分だけが勝手に拒絶しようと思うのはあまりに思いあがったハイカラの考えかもしれない。ある人の話では日々わずかな一定量の食餌をねずみのために提供してさえおけば決して器具や衣服などをかじるものではないという事である。ある経済学者の説によるといかなる有害無益の劣等の人間でも一様に「生存の権利」というものがあるそうである。そんならねずみだって同じ権利を認めてやらないのはわるいような気がする。しかしそういう権利が人間にさえあるのかないのか自分にはわからない。かりにあるとしたところで両方の権利が共立しない時に強いほうの動物が弱いほうをひどい目にあわせるのは天然自然の事実であっていかなる学者の抗議もなんの役にも立たないようである。