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どんぐり

寺田寅彦随筆集 第一巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页

青空文庫

そして人間がするように居眠りをするのであった。猫が居眠りをするという事実が私には珍しかった。大きな発見でもしたような気がして人に話すと知っている人はみんな笑ったし、たまに知らない人があってもだれもこの事実をおもしろがらないようであった。しかし私は猫のこの挙動に映じた人間の姿態を熟視していると滑稽やら悲哀やらの混合した妙な心持ちになるのである。

このぶんでは今に子猫は死んでしまいそうな気がした。時々食ったものをもどして敷き物をよごすような事さえあった。夜はもう疲れ切ってたわいもなく深い眠りにおちて、物音に目をさますようには見えなかった。それでも不思議な事にはねずみの跳梁はいつのまにかやんでいた。まれに台所で皿鉢のかち合う音が聞こえても三毛は何も知らずに寝ていた。おそらくまだねずみというものを見た事のない彼女の本能はまだ眠っているのだろうと思われた。

あんまりいじめると、もうどこかへやってしまうとか、もとの家へ返してしまうとかいうおどかしの言葉が子供らの前で繰り返されていた。とうとう飼い主の家に相談して一両日静養させてやる事にした。

猫がいなくなるとうちじゅうが急にさびしくなるような気がした。