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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页
もしどこまでも非人間的な態度で行けば物理学の書籍からこのような言葉を除去しなければならぬはずであるが、実際は平気でこれを使用している、この一事でも非人間主義の物理学が人間の便宜のために膝を屈している事はわかるだろう。
ある人は著者に物理学の教科書を幾何学教科書のような画一的なものにしたいものであると言ったが、自分はそれはむつかしかろうと考える。数学のように最初全く任意に(もっとも経験から暗示されるものではあるが)一つの概念を与えあとは解析ばかりでその内容を展開するのと、物理学で自己以外の実在として与えられた外界の現象を系統立てるのとはよほど趣がちがわなければなるまい。たとえば一つの自動車を作ってその機械の自己の作用で向かう所にどこまでも向かわせる場合には便宜とか選択の問題は起こらぬ、車は行く所にしか行かぬのであるが、これが解析的な数学の行き方とすれば物理学のはそうでない。このような自動車のハンドルを握って四通八達の街頭に立っているようなものである。同じ目的地に達するのでも道筋の取り方は必ずしも一定していない。そこで径路の選択という問題が起こり、この選択の標準とするものはつまり人間の便宜である、思想の節約である。