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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页
と「三越」が相対しているのはなんだかおもしろい事のように思われる。丸善が精神の衣食住を供給しているならば三越や魚河岸は肉体の丸善であると言ってもいいわけである。
三越の玄関の両側にあるライオンは、丸善の入り口にある手長と足長の人形と同様に、むしろないほうがよいように思われる。玄関の両わきには何か置かなければいけないという規則でもあるのなら、そういう規則は改めたほうがいいと思う。
入り口をはいると天井が高くて、頭の上がガランとしているのは気持ちがいい。桜の時節だとここの空に造花がいっぱいに飾ってあったりして、正面の階段の下では美しい制服を着た少年が合奏をやっている事もあった。いろいろな商品から出るにおいと、多数の顧客から蒸し出されるガスとで、すっかり入場者を三越的の気分にしてしまう。
自分が用のあるのは大概五階か六階であるから、多くの場合にすぐ昇降機で上ってしまう。しかし、時にはすべての階をすみからすみまで歩かせられる事もある。歩いてみるとやはり歩いてみるだけの価値は充分にある。ずいぶんいろいろの物を覚えいろいろの問題にぶつかる、そしていろいろの人間のいろいろの現象を見せてもらう事ができる。