轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页
長い筆の先に粘い絵の具をこねるときの特殊な触感もさらに強く二十余年前の印象を盛り返して、その当時の自分の室から庭の光景や、ほとんど忘れかかった人々の顔をまのあたりに見るような気がした。
まず手近な盆栽や菓子やコップなどと手当たり次第にかいてみた。始めのうちはうまいのかまずいのかそんな事はまるで問題にならなかった。そういう比較的な言葉に意味があろうはずはなかった。画家の数は幾万人あっても自分は一人しかいないのであった。
思うようにかけないのは事実であった。そのかわり自分の思いがけもないようなものができてくるのもおもしろくない事はなかった。とてもかけそうもないと思ったものが存外どうにか物になったと思う事もあり、わけもないと思ったものがなかなかむつかしかったりした。それよりもおもしろいのは一色の壁や布の面からありとあらゆる色彩を見つけ出したり、静止していると思った草の葉が動物のように動いているのに気がついたりするような事であった。そして絵をかいていない時でもこういう事に対して著しく敏感になって来るのに気がついた。寝ころんで本を読んでいると白いページの上に投じた指の影が、恐ろしく美しい純粋なコバルト色をして、そのかたわらに黄色い補色の隈を取っているのを見て驚いてしまってそれきり読書を中止した事もある。