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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页
またいくら広くてもその面積はわれわれの下駄ばきの足を容れる事を許さないために、なんとなく行き詰まった窮屈な感じを与えるが、畑地ならば実際どこでも歩いて行けば行かれると思うだけでも自由なのびやかな気がする。
ねぎや大根が至るところに青々として、麦はまだわずかに芽を出した所があるくらいであった。このあいだまで青かったはずの芋の葉は数日来の霜に凍ててすっかりうだったようになったのが一つ一つ丁寧に結び束ねてあった。
成増でおりて停車場の近くをあてもなく歩いた。とある谷を下った所で、曲がりくねった道路と、その道ばたに榛の木が三四本まっ黄に染まったのを主題にして、やや複雑な地形に起伏するいろいろの畑地を画布の中へ取り入れた。
帰りに汽車の窓から見た景色は行きとは見違えるほどいっそう美しかった。すべてのものが夕日を浴びて輝いている中にも、分けて谷の西向きの斜面の土の色が名状のできない美しいものに見えた。線路に沿うたとある森影から青い洋服を着て、ミレーの種まく男の着ているような帽子をかぶった若者が、一匹の飴色の小牛を追うて出て来た。牛の毛色が燃えるように光って見えた。