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どんぐり

寺田寅彦随筆集 第一巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页

青空文庫

この一編を書くようになった動機はむしろこの点に対する私の不可解な疑念であると言ってもいい。

私は子供の時分から、医者の診察を受けている場合にきっと笑いたくなるという妙な癖がある。この癖は大きくなってもなかなか直らなくて、今でもその痕跡だけはまだ残っている。

病気といっても四十度も熱があったり、あるいはからだのどこかに堪え難い痛みがあったりするような場合はさすがにそんな余裕はないが、病気の自覚症状がそれほど強烈でなくて、起き上がってすわって診察してもらうくらいの時にこの不思議な現象が起こるのである。

まず医者が脈をおさえて時計を読んでいる時分から、そろそろこの笑いの前兆のような妙な心持ちがからだのどこかから起こって来る。それは決して普通のおかしいというような感じではない。自分のさし延べている手をそのままの位置に保とうという意識に随伴して一種の緊張した感じが起こると同時にこれに比例して、からだのどこかに妙なくすぐったいようなたよりないような感覚が起こって、それがだんだんからだじゅうを彷徨し始めるのである、言わばかろうじて平衡を保っている不安定な機械のどこかに少しのよけいな重量でもかかると、そのために機械全体のつりあいがとれなくなって、あっちこっちがぐらついて来るようなものかもしれない。