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えいがじだい
寺田寅彦随筆集 第二巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第二巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:映画時代、子猫、解かれた象、相対性原理側面観、怪異考、比較言語学における統計的研究法の可能性について、化け物の進化、ルクレチウスと科学、蓄音機、亮の追憶、一つの思考実験、電車の混雑について、浮世絵の曲線、二十四年前、伊吹山の句について、池、路傍の草、備忘録、日本楽器の名称、Liber Studiorum、時事雑感。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 207,099 字 · 419 页
うそもしょっちゅうついているとおしまいには自分でもそれを「信じる」ようになるというのは、よく知られた現象である。いろいろな「奇蹟」たとえば千里眼透視術などをやる人でも、影にかくれた助手の存在を忘れて、ほんとうに自分が奇蹟を行なっているような気のする瞬間があリ、それが高じると、自分ひとりでもそれができるような気になる瞬間もありうるものらしい。幾年もつづけてジグスとマギーをかいている画家は、おしまいには生きたジグスとマギーの存在を信じて疑わなくなるだろうが、それと似た頭の迷いが起こりはしないか。
ビーカーのパルプが真綿に変わるまでの途中の肝心の経路も考え方によっては、ほんのちょっとした事のように思われるかもしれない。そのちょっとのところに目をふさいで見れば、確かに藁が真綿になるに相違ないのである。山の芋が鰻になったりする「事実」も同様である。だんだんにこの「事実」に慣れて来ると、おしまいには、そのいわゆる「ちょっとした」経路を省略しても同じ事になりそうな気がするものではあるまいか。頭の冷静な場合にはそんな事はないとしても、切迫した事態のもとに頭が少し不透明になった場合には存外ありそうな事だと思う。