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えいがじだい
寺田寅彦随筆集 第二巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第二巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:映画時代、子猫、解かれた象、相対性原理側面観、怪異考、比較言語学における統計的研究法の可能性について、化け物の進化、ルクレチウスと科学、蓄音機、亮の追憶、一つの思考実験、電車の混雑について、浮世絵の曲線、二十四年前、伊吹山の句について、池、路傍の草、備忘録、日本楽器の名称、Liber Studiorum、時事雑感。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 207,099 字 · 419 页
銀器の光、ガラス器のきらめき、一輪ざしの草花、それに蜜蜂のうなりに似たファンの楽音、ちょうどそれは「フォーヌの午後」に表わされた心持ちである。ドビュッシーはおそらく貧血性の冷え症ではないかと想像される。
夜も夏は楽しい。中庭へ籐椅子を出して星をながめる。スコルピオン座や蟹座が隣の栗のこずえに輝く。ことしは花壇の向日葵が途方もなく生長して軒よりも高くなった。夜目にも明るい大きな花が涼風にうなずく。
人のいやがる蚊も自分にはあまり苦にならない。中学時代にひと夏裏の離れ屋の椅子に腰かけて読書にふけり両足を言葉どおりにすきまなく蚊に食わせてから以来蚊の毒に免疫となったせいか、涼み台で手足を少しぐらい食われてもほとんど無感覚である。蚊のいない夏は山葵のつかない鯛の刺身のようなものかもしれない。
夕立の来そうな晩ひとり二階の窓に腰かけて雲の変化を見るのも楽しいものである。そういう時の雲の運動はきわめて複雑である。方向も速度も急激に変化する。稲妻でもすればさらにおもしろい。いかなる花火もこの天工のものには及ばない。
来そうな夕立がいつまでも来ない。十二時も過ぎて床にはいって眠る。