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えいがじだい

寺田寅彦随筆集 第二巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第二巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:映画時代、子猫、解かれた象、相対性原理側面観、怪異考、比較言語学における統計的研究法の可能性について、化け物の進化、ルクレチウスと科学、蓄音機、亮の追憶、一つの思考実験、電車の混雑について、浮世絵の曲線、二十四年前、伊吹山の句について、池、路傍の草、備忘録、日本楽器の名称、Liber Studiorum、時事雑感。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 207,099 字 · 419 页

青空文庫

今でも時々家内で子猫のうわさが出る。そして猫にも免れ難い運命の順逆がいつでも問題になった。このあいだ近所の泥溝に死んでいた哀れなのら猫の子も引き合いに出て、同じ運命から拾い上げられて三毛に養われ豊かな家にもらわれて行ったあのちびがいちばんの幸運だというものもあれば、御隠居さんばかりの家に行った赤がいちばん楽でいいだろうというものもあった。妻は特にかわいがっていた太郎がわりに好運でなかった事を残念がっているらしかったが、私はどういうものか芋屋の店先に眠っているおさるの運命の行く末に心を引かれた。

ある夜夜ふけての帰り道に芋屋の角まで来ると、路地のごみ箱のそばをそろそろ歩いているおさるの姿を見かけた。近づいて頭をなでてやると逃げようともしないでおとなしくなでられていた。背中がなんとなく骨立っていて、あまり光沢のないらしい毛の手ざわりも哀れであった。

娘を片付けて後のある場合の「父」の心を思いながら私は月のおぼろな路地を抜けてほど近いわが家へ急いで行った。

私は猫に対して感ずるような純粋なあたたかい愛情を人間に対していだく事のできないのを残念に思う。