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えいがじだい
寺田寅彦随筆集 第二巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第二巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:映画時代、子猫、解かれた象、相対性原理側面観、怪異考、比較言語学における統計的研究法の可能性について、化け物の進化、ルクレチウスと科学、蓄音機、亮の追憶、一つの思考実験、電車の混雑について、浮世絵の曲線、二十四年前、伊吹山の句について、池、路傍の草、備忘録、日本楽器の名称、Liber Studiorum、時事雑感。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 207,099 字 · 419 页
それで結局、なんらの異議もなくこの象は狂気しているという事が人間の仲間から仲間へと伝えられる。その間に象の狂暴な行為はいろいろに誤り伝えられるが、そのたびごとに少しずつ悪いほうへ悪いほうへと変化して行くのが通則である。
この善良な人間たちは暇に任せて象のその後の行動に注目する。そうして彼らの期待に合うような象の行為を発見する事の満足を求めようとするのである。その満足が得られない場合には、それが得られそうな機会を積極的に作る事さえいとわない。なるほどこいつは気違いだという事がふに落ちるまでは安心ができないのである。考えてみるとはなはだ不可思議な心理ではあるが、畢竟は人間がその所信に対する確証を求めようとするまじめな欲求にほかならないかもしれない。
それはどうでもいいが、この場合迷惑至極なのは象である。腹が立っても、どうする事もできないところへ、こういう境遇に置かれてプレジュディスのめがねの焦点になっては全くやるせがない。もしも一つ所に象の仲間がおおぜいいて、そして仲間どうしで話をする事ができたらそれならなんでもない。そうなれば象仲間で人間のほうを気違いにしてしまって、そして象どうしで仲よくしていればよいのであるが、悲しい事には、この象にはそういう自分の世界が恵まれていなかった。