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えいがじだい
寺田寅彦随筆集 第二巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第二巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:映画時代、子猫、解かれた象、相対性原理側面観、怪異考、比較言語学における統計的研究法の可能性について、化け物の進化、ルクレチウスと科学、蓄音機、亮の追憶、一つの思考実験、電車の混雑について、浮世絵の曲線、二十四年前、伊吹山の句について、池、路傍の草、備忘録、日本楽器の名称、Liber Studiorum、時事雑感。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 207,099 字 · 419 页
一
その怪異の第一は、自分の郷里高知付近で知られている「孕のジャン」と称するものである。孕は地名で、高知の海岸に並行する山脈が浦戸湾に中断されたその両側の突端の地とその海峡とを込めた名前である。この現象については、最近に、土佐郷土史の権威として知られた杜山居士寺石正路氏が雑誌「土佐史壇」第十七号に「郷土史断片」その三〇として記載されたものがある。「(前略)昔はだいぶ評判の事であったが、このごろは全くその沙汰がない、根拠の無き話かと思えば、「土佐今昔物語」という書に、沼澄(鹿持雅澄翁)の名をもって左のとおりしるされている。
孕の海にジャンと唱うる稀有のものありけり、たれしの人もいまだその形を見たるものなく、その物は夜半にジャーンと鳴り響きて海上を過ぎ行くなりけり、漁業をして世を渡るどちに、夜半に小舟浮かべて、あるは釣りをたれ、あるいは網を打ちて幸多かるも、このも海上を行き過ぐればたちまちに魚騒ぎ走りて、時を移すともその夜はまた幸なかりけり、高知ほとりの方言に、ものの破談になりたる事をジャンになりたりというも、この海上行き過ぐるものよりいでたることなん語り伝えたりとや。