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あきかぜとはは

尾崎士郎短篇集

尾崎 士郎

尾崎士郎『尾崎士郎短篇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:秋風と母、運命について、河鹿、菎蒻、三等郵便局、十三夜、鶺鴒の巣、滝について、叛骨・中野正剛、蜜柑の皮。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 页

青空文庫

ある。

午前九時になると、ラジオはマニラ市内の街頭から、店頭から、事務所から、邦人という邦人が片っぱしから逮捕されはじめていることを報じた。社宅へ電話をかけようとしたが、電話線は切断されたあとで事務所との連絡はまったく途絶えてしまった。疾っくに避難の命令は下った筈であるのに何時まで待っても誰ひとりやって来ないのである。

正午少し前、門の前で自動車がとまったので、慌ててとびだそうとする私のうしろから、「おい、来たぞ」と、同僚の古見が上ずった声で叫んだ。私は両足を硬直させたまま棒立ちになった。門の入口にカーキー服の銃剣をつけたフィリピン兵が三名ぬっとあらわれたのである。ついに来るべきものが来たのだ。門と玄関との距離は百メートルほどはなれている。兵隊のほかに平服の男が二人先に立って歩いてくるのが見えた。

咽喉がかさかさに渇いていたが、しかし私は妙な落ちつきを覚え、すぐ、ゆったりと足を踏みしめながらこっちを向いて歩いてくるフィリピン兵にちかづいていった。顔のまるい見るからに大学生らしい青年であるが、彼は私たちの前で威厳をつくるためにぐっと胸を張った。古見が巧みな英語で挨拶すると、ふふんと、せせら笑うような微笑を泛べ、