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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
尾崎士郎『尾崎士郎短篇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:秋風と母、運命について、河鹿、菎蒻、三等郵便局、十三夜、鶺鴒の巣、滝について、叛骨・中野正剛、蜜柑の皮。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 页
だが、彼とはたった一言も話したことがないのにもかかわらず、私には彼の心の中に張り詰めている静かな幻想がわかるような気がした。つまり、この老人はどうして退屈な余生を過ごそうかということを考えているのだ。何故かといって彼は運命の転化を望むためには、あまりに年をとりすぎてしまっているのだから。
秋が終りかけていた。それはあたり前の事実である。だが、しかし、この屋根裏の部屋の中で秋が終りかけているということは何という悲しむべきことだ。――大気は妙にうすじめって底冷えのする風が正面から吹きつけるので、私は窓をあけることができなかった。それに日本から来る筈の金については、最早かすかな望みすらも失わねばならなくなった。私のポケットには、一弗の金もなくなっているし、室の中には古びた一台のカンプベッドがあるだけで、新しい冬に備えるための用意は少しも出来上っていないのだ。窓の下に続いているバルコンにも今は人の姿を見ることができなくなり、マンドリンの音も聞えなくなった。――ある朝である。私が洗面所へゆくために廊下へ出ると、隣りの相場師の部屋の扉が半ば開け放されたままになっていたので、声をかけるためにそっと覗いたとき、私は思わず立ちどまった。