轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
木暮理太郎『山の憶い出 上』。同一底本的分册已合并为一书。收入:笛吹川の上流(東沢と西沢)、奥秩父の山旅日記、釜沢行、秩父の奥山、利根川水源地の山々、秋の鬼怒沼 、美ヶ原、木曽駒と甲斐駒、黒部川奥の山旅、黒部川を遡る 、針木峠の林道 、春の大方山、三国山と苗場山、八ヶ峰の断裂 。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 284,014 字 · 565 页
大に驚きて急ぎ身を岩蔭に潜め、屏息して之を窺ふ、暫くありてまた咆哮する声の聞えて、一頭の大熊徐ろに蒙茸を排き、渓のほとりを歩みつつも、既に吾を認めしものの如く、矚視之を久うして、終に灌木の中に入る、かゝる程に梢を渡る一陣の渓風、驀然として袂を捲き、肌に粟を生じて汗氷よりも冷やかに、鬼気人を襲ふかと覚えて、そゞろに心の急かるれば、遑しくこゝを立ちいで、俯伏せる偃松の間を右に上り左に廻りて、嶄巌の上を辿り行くこと二十余町、辛うじて前岳の頂に達し、頭を回して来路を俯せば、跡はいつしか白雲に埋れて、身は山上の孤客となり、千古変らざるの天風、嫋々として直に穹窿より流れ来り、斜陽われを照して、翠紫を畳める四山の落暉、月影よりも淡し。
この夜絶巓より九町下なる玉窪の小屋といふに宿り、駒ヶ岳神社の祠官の神龕を開くとて上松より登山せるものと会し、酒を汲み蕈を灸りつゝ夜もすがら語ふに、七月七日の月は宵より中天に懸り、皎々たる光雪の如き花崗岩を照し、白雲谷より谷を埋め来りて、をりふしは窓の下に訪るゝなど、身は陶然として広寒宮裏の仙かと疑はるゝに、樹梢を伝ふ猿の声、近く屋外に聞えて、いと哀なり。