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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)

山の憶い出 上

木暮 理太郎

木暮理太郎『山の憶い出 上』。同一底本的分册已合并为一书。收入:笛吹川の上流(東沢と西沢)、奥秩父の山旅日記、釜沢行、秩父の奥山、利根川水源地の山々、秋の鬼怒沼 、美ヶ原、木曽駒と甲斐駒、黒部川奥の山旅、黒部川を遡る 、針木峠の林道 、春の大方山、三国山と苗場山、八ヶ峰の断裂 。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 284,014 字 · 565 页

青空文庫

これで「何かうまい食べ物があって、そろそろ空いて来た腹がふさげれば、今日は満足だ」。屏風岩を鎖や梯子で下って小屋を眼前に視た時、そう思った。

しかし小屋は留守だった。中に入って探し廻っても、食べ物は何一つ見当らない、囲炉裏の自在に懸った鉄瓶の湯は冷え切っていた。止むなくそれを飲んで五銭の湯代を置き、暗い森林の中を暗い気持で急ぎ下った。笹ノ平まで来ると半ば朽ちた小屋があって、大きな荷物を傍に人が休んでいる。それが屏風小屋の主人であった。「この荷は米と乾うどんで、外に食物は持っていない、昼食は今すました。小屋の蒲団の間に菓子箱を入れて置いた筈だよ」といわれて、「どうもそこまでは気が付かなかった」と苦笑して別れた。もうあたりの景色などは目をくれるのみで、心にとめる余裕もなく、一刻も早く人里に出て※腹を充たしたいという考に占められていた。下るに連れて嵐のあとのむし暑さが身にこたえて、路の導くままに歩を運ぶ脚がふらふらする。漸く瀑の音が近付いて尾白川に出た、一本の丸木橋が架けられてある、水面からかなり高い、これは馬乗になって渡った。川に沿うて下ると間もなく駒ヶ岳神社の里宮に着いたが、失望したことには社殿は改築中で、それも農繁期の為か工事は中止されて、留守居の老人がいるに過ぎない。