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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)

山の憶い出 上

木暮 理太郎

木暮理太郎『山の憶い出 上』。同一底本的分册已合并为一书。收入:笛吹川の上流(東沢と西沢)、奥秩父の山旅日記、釜沢行、秩父の奥山、利根川水源地の山々、秋の鬼怒沼 、美ヶ原、木曽駒と甲斐駒、黒部川奥の山旅、黒部川を遡る 、針木峠の林道 、春の大方山、三国山と苗場山、八ヶ峰の断裂 。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 284,014 字 · 565 页

青空文庫

淡紅色の花が褪せかかった時に少し黄味を加えたものと思えば大抵想像がつく。幹も葉も新らしいものは黄の勝った緑である。八町ヶ原から甲武信岳に向って一里程も行く間は、針葉樹主に栂の大木で、其下に目立って美しく感じられる花は、此石楠と車百合である。私は余りの美しさに堪らなくなって、殊に見事な枝を二、三本折り取って担いで来た。段々疲れるに従って一本棄て二本棄て、梓山まで持ち込んだのは、僅に一本の小さな枝に過ぎなかった。

明日は別れだというので其夜は酒を汲みながら、安十郎や測量当時測量部の人夫となっていたという男を呼んで貰って、いろいろ山や沢の話を聞いた。安十郎に拠れば甲武信岳の東南の山は雲切山と呼ばれ、鶏冠山は其山から南に派出されていること、十文字峠から出る沢は股ノ沢、三宝山から出る沢は真の沢、甲武信と雲切とから出る沢は木賊沢と呼ばれ、東に流れて秩父の荒川となること、真ノ沢と股ノ沢との間の尾根をナカミネ尾根と称すること、甲武信から国師、金峰、小川山に至る迄国境の切明けあることなどが判然した。もう一人の男は甲武信の西の山をミズシということや、甲武信附近の山を総称して三方山と呼んでいたことなどを教えて呉れた。