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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)

山の憶い出 上

木暮 理太郎

木暮理太郎『山の憶い出 上』。同一底本的分册已合并为一书。收入:笛吹川の上流(東沢と西沢)、奥秩父の山旅日記、釜沢行、秩父の奥山、利根川水源地の山々、秋の鬼怒沼 、美ヶ原、木曽駒と甲斐駒、黒部川奥の山旅、黒部川を遡る 、針木峠の林道 、春の大方山、三国山と苗場山、八ヶ峰の断裂 。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 284,014 字 · 565 页

青空文庫

別山方面の登路は、平蔵谷の雪渓の上部を環る長い岩壁を辿るのが尤も危険で、悪い場所が三ヶ所程ある。岩壁に取り付くまででも、突き出した岩にちょいと体を打ち付けた反動だけでも刎ね落されそうな足場の悪い急崖を絶えず横に搦まなければならないから、恐怖心と油断とは此場合絶対に禁物である。一山を上下するに此の如き険悪なる山稜の長く続く所は、唯一の穂高山を除いて、南北日本アルプスにも類はあるまいと思う。

直ぐにも出発して元の路を三窓に引返し、山稜を伝いて小窓に出で、逆に当初の目的を遂行しようと強く主張する南日君をなだめて、長次郎谷の雪渓を下ることに同意させるには、劒へ登るよりも骨が折れたので、南日君が渋々とカンジキを穿いて雪渓を下り始めるまでは何だ安心されなかった。私も小窓へ廻ることには大に心をそそられたのであるが、夫よりも長次郎谷を下って見たいという望みの方が少し強かったのである。

驚いたのは雪渓を下る際、源次郎は仁王立ちに突立ったまま、軽く杖をあてがって、あの急峻な雪上を一気に二、三百尺宛も滑り下りた手際である、夫にも拘らず見て居て少しも危気がない、しかも進止自在である。