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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
木暮理太郎『山の憶い出 上』。同一底本的分册已合并为一书。收入:笛吹川の上流(東沢と西沢)、奥秩父の山旅日記、釜沢行、秩父の奥山、利根川水源地の山々、秋の鬼怒沼 、美ヶ原、木曽駒と甲斐駒、黒部川奥の山旅、黒部川を遡る 、針木峠の林道 、春の大方山、三国山と苗場山、八ヶ峰の断裂 。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 284,014 字 · 565 页
仙人谷を上る
明る朝になって見ると果して熨をかけたように乾いていた。実に贅沢な野営であった。
仙人谷を上る
三日。今日も快晴である。出懸けに一風呂浴びて、午前七時名残惜しい野営地を後にした。岩壁の上を河に沿うて仙人谷に出たいと思ったが、それには半日以上を要するというので、昨日下りた瀑のある沢を暫く登ってから、沢を離れて左に雑木の茂った斜面を一時間程上ると尾根の上に出た。南東に鹿島槍ヶ岳、牛首山、岩小屋沢岳などが見え、南には仙人山の尾根が間近く聳え立ち、北には餓鬼奥鐘の連嶺の上に猫又山の雪が眩い光を放っていた。
此処から瞰下した仙人谷は、予期に反して思の外に明るい谷であった。陰鬱で暗い、そして木はあっても岩巣だらけで、一寸途方に暮れるのではあるまいかと想像して、心をときめかしていた此谷が、しかも黒部本流への落囗に近いこのあたりで、斯くも打ち開けたなごやかな姿をしていようとは誰が思ったろう。仙人山から東へ続く山稜の一峰二一七三米の三角点から派出された対岸の尾根こそは、木立の繁った急峻な側崖が押し迫ってはいるが、此方側の中腹から谷底へかけては、割合になだらかな斜面で、雑草や灌木が青々と生い茂り、こんもりと盛り上った椈の大木が疎らに散生して谷風にそよいでいるさまは、人里近くの谷地にポプラの木が生えているような感じである。