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ゆうれい
幽霊
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1925(大正14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,972 字 · 24 页
辻堂の葬式があってから、三日の間は何事もなかったが、その次の四日目の朝のことである。書斎の椅子に凭れて、何心なく其日とどいた郵便物を調べていた平田氏は、沢山の封書やはがきの中に混って、一通の、可也みだれてはいたが、確かに見覚えのある手蹟で書かれた手紙を発見して、蒼くなった。
この手紙は、俺が死んでから貴様の所へ届くだろう。貴様は定めし俺の死んだことを小躍りして喜んでいるだろうな。そして、ヤレヤレこれで安心だと、さぞのうのうした気でいるだろうな。ところが、どっこいそうは行かぬぞ。俺の身体は死んでも、俺の魂は貴様をやっつけるまでは決して死なないのだからな。なる程、貴様のあの馬鹿馬鹿しい用心は生きた人間には利目があるだろう。たしかに俺は手も足も出なかった。だがな、どんな厳重なしまりでも、すうっと、煙の様に通りぬけることの出来る魂という奴には、いくら貴様が大金持でも策の施しようがないだろう。おい、俺はな、身動きも出来ない大病にとっつかれて寝ている間に、こういうことを誓ったのだよ。この世で貴様をやっつけることが出来なければ、死んでから怨霊になってきっと貴様をとり殺してやるということをな。