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かいとうおう
怪塔王
海野 十三
「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1938(昭和13)年4月8日~12月4日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,635 字 · 337 页
あわれ青江三空曹も、いさましく怪塔に進撃の途中で、火だるまになって焼け死ぬかとおもわれたその時――
「おい青江、がんばれ」
とつぜん、青江の耳になつかしい声がきこえました。
「おお」
とふりかえって見ると、おもいがけなく自分のうしろに、いつ来たのか小浜兵曹長がやはり綱にぶらさがって、こっちへ近づいて来るではありませんか。
「ああ、上官」
青江の瞼から、あつい涙がはらはらとこぼれおちました。部下をおもう小浜兵曹長のあつい心に感激した涙でありました。
「おい青江、力をおとすな。おれが火を消してやるから、もうしばらくの辛抱だ」
と叫んだのですが、はたして兵曹長は、火だるまになった青江をすくうことができるでしょうか。
あわてる怪塔王
1
怪塔にわたしかけた一本の麻綱に、あぶない生命を託してぶらさがっている青江・小浜の二勇士の姿を、もし誰か同胞が見たとすると、彼は腸をかきむしられるようなくるしさにおそわれずにはすみますまい。
怪塔王は、このありさまを怪塔の窓から、見おろし、ますます狼狽のいろをあらわしています。そしてなお磁力砲を腕にかかえこんで、ひねくりまわしていますが、あわてているので、なかなかおもうようなところへ怪力線をあてることができません。