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みっつのあざ
怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集
小酒井 不木
小酒井不木『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三つの痣、暴風雨の夜、秘密の相似、卑怯な毒殺、鼻に基く殺人、初往診、呪われの家、猫と村正、肉腫、謎の咬傷、血の盃、人工心臓、新案探偵法、死の接吻、好色破邪顕正、血友病、狂女と犬、犬神、遺伝、按摩、ある自殺者の手記。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,140 字 · 396 页
そうして、自分が今ここにその真相を書き残さなかったら、永久に知れずに済むであろう。けれども、永久に知れずに済ますにはあまりに惜しい。俗謡に、「知れちゃいけない二人の仲をかくして置くのも惜しいもの」とある。その心理で、今回もまた自分はこれを書き残すのだ。
近藤進と自分とはまったく路傍の人であった。それだのに何で自分が彼を殺す気になったのか、直截に言えば彼の鼻である。彼の鼻が自分の気に喰わなかったからである。それでは彼の鼻のどこが自分の気に喰わなかったのか、それはいまだに自分にもわからない。別に彼の鼻がずばぬけて大きかったのではなく、また低過ぎたのでもない。曲って居たのでもなければ、仰向いて居たのでもない。けれども私は、はじめて彼に道ですれちがったとき、思わずもぞっと身ぶるいした。つまり、全体の感じが悪かったのだ。そうしてこの鼻を滅ぼさなければ、到底自分は生きて居られないと思った。だからその瞬間に彼を殺すことに決心して、彼のあとをつけて行ったのである。
それから自分は彼の生活状態を熱心に研究して、彼の家にはしのび入り易いこと、彼は老婆と二人きりで暮して居ること、彼が愛猟家で書斎で火薬の装填を行うことなどを知り、自分はすばらしい殺害計画を思いついたのである。