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あくりょう

悪霊

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1933(昭和8)年11月~1934(昭和9)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,980 字 · 67 页

青空文庫

一人は黒川博士のお嬢さん鞠子さん、もう一人は先っきから話題に上っていたミディアムの龍ちゃんだ。鞠子さんが現在の夫人の娘ではなくて、十年程前になくなられたという先夫人のお子さんであることは云うまでもない。この二人の少女は同年の十八歳で、殆どお揃いと云ってもいい不断着のワンピースに包まれていたが、その容貌の相違は、実に際立った対照を為していた。

鞠子さんは髪を幼女の様なおかっぱにして、切下げた前髪が眉を隠さんばかりの下から、絶えず物を云っている大きな目が、パッチリ覗いて、すべっこい果物みたいな唇が、いつでも笑う用意をして、美しい歯並を隠している様な、非常に美しい人であるのに比べて、手を引かれている龍ちゃんの方は、両眼とも綴じつけられた様な盲目だし、その上ひどく縹緻が悪いのだ。色が黒くて、おでこで、鼻が平べったくて、頬が骨ばっていて、唇は蒲団を重ねた様に厚ぼったくて、それが異様に赤いのだ。彼女が笑うと印度人の様だ。若し目が開いていたら、その目も印度人の様に敏感で奥底が知れなかったことだろう。

これで心霊研究会の会員がすっかり揃った。時によって飛入りの来会者はあるけれど、常連は今この部屋に集った五人の男と二人の女と一人の霊媒、合せて八人のささやかな会合なのだ。