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あくま
悪魔
小川 未明
「新文藝」1910(明治43)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,591 字 · 16 页
三
さあ言いなさい。」四十男は、前の家を指さした。そして、他には分らぬ手真似ですべて語った。ちょうどこの男は唖のようであった。そして、青ぶくれのした爺さんがするように最後に耳から、耳へと語り伝えた。
「それは面白い。」と銃を持った男が賛成した。
三
ちょうどミイラを黒い布で巻いて放り出したように、村の両端の、灰色の屋根に身動きをしない男が銃の筒先を出してあちらの森の方を覗いていた。村中は申し合せたように戸を閉めてしまった。ただ杉の木の闇に羽の白い虫が、倦まずに上下へと機を織っていた。
道は白く乾いていた。屈折した道は白蛇の這うように、黒い黙った森へとつづいている。
黒い森は笑っているように見えた。白い道は媚びているように動いて見えた。けれど、森も、道も、気味悪いなにものかに使われている悪魔の同類のように思われて、この白い道にも油断がならない。
沈黙は、夜までつづいた。次第に灰色が濃くなって来た。いつしか空の色が鼠色となった。そして重く下がって森の後に垂れた。次第にその幕は、こちらへとなにものかの手によって運ばれた。やがてその灰色の幕は森の頭を撫でて、後方から前へと持って来られた。