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あくま

悪魔

小川 未明

「新文藝」1910(明治43)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,591 字 · 16 页

青空文庫

四

やがて森も隠れた。白い道を、一寸二寸と幕の歩みはこちらへと近づいた。幕の裾の触れた後には、すべての色が死んで、一色の黒となった。

天地はいつしか黒色の勝利に帰した。

この夜、空には星の光が見えなかった。

四

赤錆の出たブリキ屋根の上には、生温い日の光も当らない。鈍色を放った雲が、その上を見下ろしながら過ぎた。煙突から出た煙は、何に憧れて行くやら、五寸ばかり一つの棒となって、煙突の口から突進したかと思うと、それが四方に散ってしまう。一片は北に向って、一片は東に向って、見る間に、それらが影も形もなくなってしまう。その果敢ない煙の姿を上に映して、遅鈍なブリキ屋根は、悲しみもしなければ、憂えもしないようだ。

ちょうど悪質の石炭が燃えた時、赤ちゃけた煙が出たが、その煙の色をした赤い髪の少女が窓際で機を織りながら、遠くの空を眺めていた。一日たったって、晴れもしない陰気な空でも、夕暮近くなると、北から風が出て、折々わずかばかり、雲切れがして、青い色を見ることがある。

青い色を、今日も当にして窓から見ているのであった。少女の傍には、他の少女が働いている。いずれも栄養不足で、色艶の好い女はない。