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おしみなくあいはうばう
惜みなく愛は奪う
有島 武郎
「有島武郎著作集 第一輯」叢文閣、1920(大正9)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 79,397 字 · 159 页
石の有する本能の方向に有機物は生じた。有機物の有する本能の方向に諸生物は生じた。諸生物の本能の有する方向に人間は生じた。人間の有する本能の方向に本能そのものは動いて行く。凡てが自己への獲得だ。その間に一つの断層もない。百八十度角の方向転換はない。
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今のような人間の進化の程度にあっては、智的生活の棄却は恐らく人間生活そのものの崩壊であるであろう。然しながら、その故を以て本能的生活の危険を説き、圧抑を主張するものがあるとすれば、それは又自己と人類とを自滅に導こうとするものだといわれなければならぬ。この問題を私がこのように抽象的に申し出ると異存のある人はないようだ。けれども仮りにニイチェ一人を持ち出して来ると、その超人の哲学は忽ち四方からの非難攻撃に遭わねばならぬのだ。
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権力と輿論とは智的生活の所産である。権威と独創とは本能的生活の所産である。そして現世では、いつでも前者が後者を圧倒する。
釈迦は竜樹によって、基督は保羅によって、孔子は朱子によって、凡てその愛の宝座から智慧と聖徳との座にまで引きずりおろされた。
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