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おしみなくあいはうばう

惜みなく愛は奪う

有島 武郎

「有島武郎著作集 第一輯」叢文閣、1920(大正9)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 79,397 字 · 159 页

青空文庫

然し私の本能のかすかな声は私をそこから立ち上らせるに十分だ。私はその声に推し進められて行く。その旅路は長い耽溺の過去を持った私を寂しく思わせないではない。然しそれにもかかわらず私は行かざるを得ない。

この男女関係の狂いから当然帰納されることは、現在の文化が男女両性の協力によって成り立つものではないという事だ。現時の文化は大は政治の大から小は手桶の小に至るまで悉く男子の天才によって作り上げられたものだといっていい。男性はその凡ての機関の恰好な使用者であるけれども、女性がそれに与かるためには、或る程度まで男性化するにあらざれば与かることが出来ない。男性は巧みにも女性を家族生活の片隅に祭りこんでしまった。しかも家族生活にあっても、その大権は確実に男性に握られている。家族に供する日常の食膳と、衣服とは女性が作り出すことが出来よう。然しながら饗応の塩梅と、晴れの場の衣裳とは、遂に男性の手によってのみ巧みに作られ得る。それは女性に能力がないというよりは、それらのものが凡てその根柢に於て男性の嗜好を満足するように作られているが故に、それを産出するのもまたおのずから男性の手によってなされるのを適当とするだけのことだ。