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おしみなくあいはうばう

惜みなく愛は奪う

有島 武郎

「有島武郎著作集 第一輯」叢文閣、1920(大正9)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 79,397 字 · 159 页

青空文庫

本当に罪人となり切る為めには、自分の凡てを捧げ果てる為めには、私の想像し得られないような強さが必要とせられるのだ。このパラドックスとも見れば見える申し出では決して虚妄でない。罪人のあの柔和なレシグネーションの中に、昂然として何物にも屈しまいとする強さを私は明かに見て取ることが出来る。神の信仰とは強者のみが与かり得る貴族の団欒だ。私は羨しくそれを眺めやる。然し私には、その入場券は与えられていない。私は単にその埓外にいて貴族の物真似をしていたに過ぎないのだ。

基督の教会に於て、私は明かに偽善者の一群に属すべきものであるのを見出してしまった。

砂礫のみが砂礫を知る。金のみが金を知る。これは悲しい事実だ。偽善者なる私の眼には、自ら教会の中の偽善の分子が見え透いてしまった。こんな事を書き進むのは、殆ど私の堪え得ないところだ。私は余りに自分を裸にし過ぎる。然しこれを書き抜かないと、私のこの拙い感想の筆は放げ棄てられなければならない。本当は私も強い人になりたい。そして教会の中に強さが生み出した真の生命の多くを尊く拾い上げたい。私は近頃或る尊敬すべき老学者の感想を読んだが、その中に宗教に身をおいたものが、それを捨てるというようなことをするのは、如何にその人の性格の高貴さが足らないかを現わすに過ぎないということが強い語調