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おしみなくあいはうばう

惜みなく愛は奪う

有島 武郎

「有島武郎著作集 第一輯」叢文閣、1920(大正9)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 79,397 字 · 159 页

青空文庫

地上の存在をかく導き来った大きな力はまた私の個性の核心を造り上げている。私の個性は或る已みがたい力に促されて、新たなる存在へ躍進しようとする。その力の本源はいつでも内在的である。内発的である。一つの花から採取した月見草の種子が、同一の土壌に埋められ、同一の環境の下に生い出ても、多様多趣の形態を取って萠え出ずるというドフリスの実験報告は、私の個性の欲求をさながらに翻訳して見せてくれる。若しドフリスの Mutation Theory が実験的に否認される時が来たとしても、私の個性は、それは単にドフリスの実験の誤謬であって、自然界の誤謬ではないと主張しよう。少くとも地球の上には、意識的であると然らざるとに係わらず、個性認識、個性創造の不思議な力が働いているのだ。ベルグソンのいう純粋持続に於ける認識と体験は正しく私の個性が承認するところのものだ。個性の中には物理的の時間を超越した経験がある。意識のふりかえりなる所謂反省によっては掴めない経験そのものが認識となって現われ出る。そこにはもう自他の区別はない。二元的な対立はない。これこそは本当の生命の赤裸々な表現ではないか。