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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页
お居間を退ろうとすると、千々子さまが後から、
「お家のためなんですから、しっかりやってちょうだい。こんなときぐらい、役に立たなくては、あなただって生きている甲斐がないでしょう」
と、おっしゃった。
ぼろソファを裏庭から拾ってきて、感じよく配置した千々子さまのサロンへ行くと、バネもパンヤもない、腑ぬけの家具なもんだから、主客の別なく首までソファに埋まり、釣り身になって鼎談をしている。ちょうど、シュラーの話に移ったところで、太田夫人と清水氏が大きな声で評論をやっていた。
「いや、それはちがう……ハークネス家の収入は、石油集団の百四十家族で、うまいこと分けてしまうので、正当な課税評価はでけんが、実際に計算したら、モルガンやロックフェラーより、よけいあるやろ。分家のブラッドでも、百億ドルいうんやから、本家のシュラーの資産は、すくなくとも、三倍はあると見てええ」
「三倍はどうかねえ……しかし、ともかくたいしたもんでさ。十四年の春に、招待されて、ロングアイランドのシュラーの別荘に行ったことがあるが、二千エーカーもある原野のような庭園のなかに、ヨーロッパから移したという中世紀の大きな城があって、その向うに飛行機の発着場が出来ている……寝室が百五十、浴室が五十、エレヴェーターが十四、一度に四百人が会食できる大食堂が、六つだっ