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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
北原白秋「婦人公論 第四十三巻第一号」1958(昭和33)年1月号<br>高村光太郎「婦人公論 第四十三巻第二号」1958(昭和33)年2月号<br>萩原朔太郎「婦人公論 第四十三巻第三号」1958(昭和33)年3月号<br>釈迢空「婦人公論 第四十三巻第四号」1958(昭和33)年4月号<br>堀辰雄「婦人公論 第四十三巻第七号」1958(昭和33)年7月号<br>立原道造「婦人公論 第四十三巻第八号」1958(昭和33)年8月号<br>津村信夫「婦人公論 第四十三巻第九号」1958(昭和33)年9月号<br>山村暮鳥「婦人公論 第四十三巻第十一号」1958(昭和33)年10月号<br>百田宗治「婦人公論 第四十三巻第十二号」1958(昭和33)年11月号<br>千家元麿「婦人公論 第四十三巻第十三号」1958(昭和33)年12月号<br>島崎藤村「婦人公論 第四十三巻第六号」1958(昭和33)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 页
」
立原は私の怒りが本物であることを、顔色で見とって言った。
「参った、失敬なことを言いました。」
私は彼があまりに悄気たので言い更めた。僕なぞは一行でも書くと売るという厄介な仕事をしているので半枚の書きためもないのだよ、若い時分は詩も何十枚も書きためていたが、もうそういう美しい宝舟は僕という港には繋がれていないと、いくらか彼をなぐさめ、自分の怒りを自分で取り消す顔付でいった。少時経ってから立原は、僕はノオトには何冊も書きためがあるといったから、それだから君の毎日は愉しいし、反対にいつも空っぽの僕は悒鬱な顔をしているんだと、私は胡麻化して言った。
さびしき野辺
いま だれかが 私に
花の名を ささやいて行つた
私の耳に 風が それを告げた
追憶の日のやうに
いま だれかが しづかに
身をおこす 私のそばに
もつれ飛ぶ ちひさい蝶らに
手をさしのべるやうに
ああ しかし と
なぜ私は いふのだらう
そのひとは だれでもいい と
いま だれかが とほく
私の名を 呼んでゐる……ああ しかし
私は答へない おまへ だれでもないひとに
夢のあと
※(始め二重山括弧、1-1-52)おまへの 心は